この体験談は、異型性髄膜腫の診断を受けたひとりの患者の話で、同じ髄膜腫でグレードⅡと診断された方には、JBTAにも同じ仲間がいることを知っていただけたらと思い綴っています。
私は、都内在住の会社員。今年で50歳。
47歳の2023年4月、人間ドッグを受けました。
特にからだの異変はなかったのですが、頭部MRIのオプションをつけました。
2年経った今、思えば当時仕事で飛行機を利用したとき、離陸や着陸の際に呼吸がしづらくなる異変はあったのですが、忙しいのもあってか疲れているのかなと気にしませんでした。
『これは私の脳ですか?他の方の間違いではないですか』と問いただしました。左大脳円蓋部に8cm超の腫瘤が映っていました。ソフトボールくらいあるので、本来ある脳の中心(脳室)が横に押されて、脳はブーメランのように変形し本来あるシワがありませんでした。また、腫瘤には大きな血管が発達していました。
その日のうちに都内の大学病院へ受診し、外来受診した医師からは『腫瘍の大きさから早く切除しなければならない』と、即日入院。自分で脳腫瘍のことを調べる時間はありませんでした。
ただ、咄嗟に自分の状況を上司に電話していました。
上司は、職場のサポート体制をすぐに作ってくていました。
腫瘍が大きいので2回に分けての開頭手術計画でしたが、『腫瘍が柔らかく1回の開頭手術で全摘できました』と12時間を超える手術後、主治医から言われて安堵しました。
病棟からの窓の景色が明るく感じました。
視覚異常に気付いていなかったのだとわかりました。
頭痛(10スケールで6〜8程度)は続きました。とにかく痛い時はロキソプロフェンをお願いしました。
頭を下にすることはできないので、膝を曲げて物を取ったりしなければならないのは大変でした。
術後6日目、主治医から『異型性髄膜腫、グレードⅡ。
良性であるけど、MIB -1陽性』と。
頭痛もあり、記録するのが精一杯でしたが、通常、腫瘍は年0.5-1mmくらいの速度で大きくなるので、増殖能が高いタイプだから8cm超の腫瘍になったんだなと理解しました。
退院後は自宅療養しながら、特に行動範囲は自宅付近の散歩で付き添いが条件でした。
仕事は在宅で、1日の業務できる時間を少しずつ増やしていく設定にしました。
同年5月末、これまで経験したことのない激しい頭痛に襲われ、2回目の入院。
髄液検査し、髄膜炎疑いと診断され、静注の抗生剤点滴が始まりました。
抗生剤の副作用で、嘔吐や下痢が強く、食事は取れませんでした。計画した抗生剤治療も2週間程度で終わり、病理結果も陰性となり退院となリました。ただ、特定菌はわかりませんでした。
同年7月上旬、再び強い頭痛に襲われ、迷わず救急外来に受診。
髄液検査を行い、髄膜炎が疑われ、3回目の入院。
再び静脈抗生剤点滴療法が開始されました。
ロキソプロフェン内服も頭痛は続きました。
左側頭部の締め付ける様な『はり』も、37度の微熱も続きました。1週間で頭痛や発熱が落ち着きました。
外来フォローとなりましたが、『はり』の症状は毎日続きました。
仕事を長く続けると『はり』は強くなり、軽度な頭痛が生じました。
『揉み上げあたりまで開頭しているので、口を動かすことで、側頭筋の影響があるかも』と主治医からは言われますが、傷口を触ると痛いので少し違うかも。
『突っ張り感』という表現でお伝えもしたけど、『こればかりは慣れていくしかない』と。
仕事で飛行機に乗るけど大丈夫?『腫瘍摘出した際に空気が残っていたけど、今は全くないので大丈夫』と、同年10月に国内出張のため飛行機に乗りました。そのときは、左耳上あたりが少し痛くなりました。
同年11月末、早朝に左側頭部(耳の上)から液体(滲出液)が滴ってきました。
筋肉に炎症があるとのことで、膿みを押し出す処置を行ってもらいました。
皮膚表皮欠損で粘膜露出しており、即日入院(4回目)となりました。主治医からは、『頭蓋骨をとめているチタンプレート(星型のビスで可愛い)から膿みが出ている場合は、頭蓋骨内部に炎症が起きており、頭蓋骨が腐ってしまうため頭蓋骨を外すことに。そうでなければ、皮膚と筋肉を外して洗浄するだけになります』と。
翌日にオペ室に向かい、2度目の開頭手術となり3時間程度で終了しました。
激痛に襲われて、点滴での鎮痛処置をお願いしました。術後8日目に病理検査結果がわかり、『再発所見なく、肉芽腫の割合がほとんどで、炎症を引き起こした原因は分かりませんが、ブドウ球菌があるのでセファメジンの点滴治療を1週間続けましょう』となり、無事退院となりました。
同年12月下旬、滲出液の漏れをシャワーの時に感知し、数日おきに朝や夜に耳下まで滲出液のたれてくることが繰り返し起きました。1日2回朝夜の軟膏処置を自分で行い、新年を迎えました。
1月4日外来受診、とにかく傷口が塞がることを祈るばかり。
左側頭部の耳裏などに滲出液があるので、プヨプヨした感じがあり、押すと出てくるようで、皮膚の癒着が進むことで滲出液の溜まり場所も無くなってくる状況でした。
この頃、傷口の部分には肉芽腫が形成されてきており、それ自体は悪いことではなく、主治医は形成外科医とも相談してくださり様子を見ていくことになりました。
肉芽腫は1ヶ月くらいで表皮が覆っていき上皮化するのですが、なかなか上皮化には時間を要してしまい、2週に1回の通院が5月ごろまで続きました。衛生を保つためにガーゼ固定していたため、外出時はニット帽をかぶっていました。
QOLは低く、頻尿や覚醒も重なり睡眠が取れない毎日でした。
肉芽腫の部分は連日の軟膏処置を頑張った成果もあり、皮膚は上皮化し滲出液もなくなり、やっと日常生活が取り戻せる感じとなりました。
『はり時々頭痛』はほぼ毎日続いていますが、2年間続けてきた抗てんかん薬もようやく卒業、再発なく経過しています。
主治医から『髄膜腫の方々の多くは脳腫瘍の患者会に入ることもないし、ネットで検索しても情報がない。症状もひとぞれぞれで違う。僕でできることがあれば協力しますよ』と。仕事を続けながら色々な症状を経験しましたが、あまり無理せずゆっくり毎日を過ごせたらHAPPYかなと思います。
敬具
(保坂達彦、患者本人)
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