体験談 Vol. 10(後編)

体験談 Vol. 10(後編)

第二部 私の脳腫瘍及び水頭症治療による晩期合併症と思われる症状とそれに伴う社会生活上の困難

  • 身体的症状

軽度の右半身麻痺と失調があり、体の右側は、錘が抜けたような感覚で、特に右上肢に振戦が生じます。

運動(特に微細運動)に困難を感じ、平衡感覚にも軽度の障害があるため、電車の中など不安定な場所で支えなしで立つのが難しいことがあります。

つまずいたときや押されたときに転びやすく、体を速く動かすのが苦手で、動作が遅れがちです。

体育の授業ではよくからかわれました。
左耳に重度の難聴があり、会話や左側の音が聞き取りにくく、雑音があるとその傾向が顕著になります。

右耳を下にして寝ていると目覚まし時計が聞こえないことが多いです。
軽度の右側同名半盲と視野狭窄があり、注目した数列の右端にある数字を見落とすことがあります。

見えていない部分を背景で補正してしまうこともあるようで、実際にはあるものを見落としてしまうこともあり、他人のペースに合わせて動くと衝突しそうになることがあります。

頻尿(睡眠時約3回、覚醒時約12回)による活動の制限が大きいです。

    • 高次脳機能障害(器質性精神障害)に当たると思われる症状
    1. 1.認知的な処理速度、配分的注意、注意の切り替え、作業記憶の障害
      (素早い反応や思考、複数のことを同時に処理すること、思考や気分を切り替えることの困難)
      詳細: 自分のペースで行動できないときは著しく不注意になり、後になって信じられないような見落としに気づくことがあります。反応や仕事が遅く、周囲をイライラさせることも多いです。
    2. 人に急かされて緊張し、意識的に速く動こうとすると余計に体が動かず、相手をさらに怒らせるという悪循環に陥ります。
    3. 注意が一点に集中しがちで、物事を逐次的にしか処理できません。場の雰囲気を考慮しながら同時に発言するのが難しいときがあります。
    4. 一つの仕事をこなすのに長期間の準備を要することもあります。
    5. テレビを見ているときに別の考えがよぎると、その間の場面が全く頭に入らないこともあります。
    6. 注意の向いていない情報が入ってきにくいです。
    7. 感情が大きく揺さぶられたあとは気分を引きずり、他のことが手につかなくなることがあります。
    8. 臨機応変に自分から動こうという意思(発想?)や次にやるべき動作が自動的に湧いてこないことが多いです。
    9. メールを打つ時のような「予測変換機能」のようなものが障害されているみたいです。
    10. つけいれられやすく、からかわれたり、意地悪されやすい。
    11. 訂正されても、なぜかそれまでの行動を続けてしまうこともあります。
    12. 2014年のV-Pシャント手術以降、こうした認知障害が一段と進行したようで、会話のスピードに付いていけないことが増えてきました。
    1. 2.手続き記憶の障害
      (体で覚えること、物事に慣れていくことの困難)
      詳細: 仕事の手順を教わってもなかなか身につかず、周りをイラつかせます。
    2. いちいち考えながら手順書を確認しないと作業ができず、自動化しにくいようです。
    3. イメージを体の動きに変換するのが苦手で、練習に長時間を要します。
    4. 同じ動作を頻回に経験しても初回並みに緊張し、「いつまでも初心者」のように感じます。
    5. 普段と違う予定があるだけで、いつものルーティンが抜け落ちることも多いです。
    6. 逆に、一度形成された手続き記憶を修正するのも難しく、キーボードのサイズが変わるだけで何年たってもミスタイプが続いています。
    1. 3.エピソード記憶、意味記憶、短期記憶の障害
      詳細: 最近の出来事を思い出せないことが増え、過去20年ほど「過ごした実感」があまりありません。
    2. 30年前のことのほうが近くに感じることがあります。
    3. 2014年のシャント手術以降、漢字が想起しにくくなり、衝動的に違った漢字を書いてしまうことがあります。
    4. 今使っていた物を、ふと置いた直後にどこに置いたか思い出せなくなることがあります。
    5. 大きく感情を揺さぶられた出来事でも、翌日になると平凡な出来事と同じか、それより思い出しにくいときがあります。
    6. ただし、「こういうことがあったよ」と言われればほぼ思い出せます。
    7. 思い出すときは対象となる記憶表象が直接は浮かばず、「昨日は何曜日だから、あの番組があって、その前はこうしていた」というように、遠回りしながら想起することが多いです。
    1. 4.視空間認知の障害
      詳細: 道に迷いやすく、左右の判別をすぐにできません。
    2. 車幅感覚がつかめないため車の運転はできず、図などが曲がっていても気づかないことがあります。
    3. 文字が幼児のように拙くなることもあります。空間的関係をイメージしにくく、文章を読むときは一字一字頭の中で「音読」しなければならず時間がかかります。
    4. あるものに注意を向けると周囲が見えなくなる傾向にあります。
    1. 5.会話の障害
      (明確な発音、スムーズな言葉の表出、話を続けることの困難)
      詳細: 発音が、ねっちゃり、もったり、躊躇しているようになるため、自分では明瞭に話しているつもりでも相手に聞きづらいことが多いです。
    2. 集団での会話では、間に自分の発言を挟むのが難しく、一対一の会話でも言葉がスムーズに出てこず相手に違和感を与えてしまいます。
    3. 書き言葉(継次処理)に比べて話し言葉(同時処理)は著しく苦手で、しゃべること自体に大きなエネルギーが必要と感じます。急いで話そうとすると焦って誤ったことを言ってしまうことがあります。
    4. しゃべろうとすると、思考がブロックされたり、何についてしゃべっているのか途中でわからなくなって着地点を見失って焦ったりすることも多いです。
    1. 6.感情の障害(抑うつ気分、過剰な不安、内向性)
      詳細: 対人的なことに強い不安を感じ、気分が沈むことが多いです。
    2. 過去の嫌なことを思い出しては引きずりがちで、悪い方向に考えやすい傾向があります。
    3. 実際に悪いことが起きやすいと感じますが、悪いことが実際には起こらず済んだ場合でも、起こった場合を考えて、いつまでも怖くなったり、腹が立ったりすることが多いです。
    1. 7.易疲労性
      詳細: 精神的・身体的にすぐ疲れてしまいます。
    2. 徐々にというより、ある臨界点を超えると急にドスンと疲れることが多いです。
    3. とくに他人のペースに合わせて仕事や会話をすると疲労感が強く、しゃべることや動くこと自体が努力を要します。
    4. 起床時から4時間くらいは、かなりだるく、いらいらします。
    5. (なかはち、患者本人)
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